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俺には、一つ下の弟がいる。



いつも俺のことを呼び捨てで呼ぶ弟。

俺のことをオタクだのキモいだの言って馬鹿にする弟。

ナマイキで兄である俺の言うことなど聞く耳もたない弟。

俺にとって、弟は、弟であってそうではないような存在。

一般人から見れば、むしろ俺の方が弟に見えてしまうのではないか、そう思う。



正直、俺は、弟の持って生まれた容姿の、性格の、才能の、その全てが欲しかった。

なんで、同じ兄弟なのに、こんなにも違う?

弟はカッコいいし、面白いし、楽観的だし、仕事はできるし。

俺はカッコ悪いし、面白くないし、悲観的だし、何をやらせても不器用だし・・・

そこに確かに存在する、決して越えることのできない壁。

そこに確かに存在する、弟に対する劣等感を抱く俺。



俺には、弟がいて、良かった、そう思えた瞬間があっただろうか?俺には分からない。

弟にイライラさせられることも多かったし、

むしろ、いなければ良かったと思えた瞬間もあったんじゃないのか?

俺にとって、弟は、どんな存在なんだ?







そんな弟が、生と死の境を彷徨っていたのは、ずっと昔の話。

まだ、俺と弟が小学生になるかならないかくらいの話であろうか。



病名 紫斑病――――



紫斑病とは、皮膚に紫色の斑点(紫斑)ができる内出血性の病気。

弟の場合、歩いただけでも出血し、触っただけでも出血する、かなりの重症だったらしい。

結果的に完治して、今は元気に暮らしている訳だが。



その他にも大病を患っていた気がするが、俺の記憶には残っていない。

ただ一つ、記憶の片隅に残っているのは、

病院に入院している弟、病院に泊りがけで弟の看護をする母、

仕事と病院通いで帰りが遅い父、その帰りを一人コタツの中でひっそりと泣きながら待っていた俺。



寂しかった。言いようのない寂しさに襲われていた。

一人ぽつんと家に取り残され、寂しさに耐えながら皆の帰りを待っていた。

気が付くと、コタツの中で泣き疲れて寝てしまっていた。

「いっぱい寂しい思いさせちゃったね、ごめんね、ごめんね・・・」

母は当時の状況を思い出しながら俺にそう語った。



寂しい毎日が続いた。それでも、俺は必死に耐えて、父の、母の、そして、弟の帰りを待っていた。

いつしか、弟の病気は完治し、弟は帰ってきた。皆で夕食の食卓を囲む日がまたやってきた。

以前は当たり前だった光景。でも、いつしか憧れへと変わってしまっていた、その光景。

俺は今またこうして家族揃っていられることの幸せを噛み締めていた。

弟が無事に帰ってきてくれたことが、何よりも嬉しかった。






俺にとって、弟は、大切な存在。それを俺は忘れていただけだったんだな。

確かに、いるとうるさかったり、腹が立ったり、劣等感を抱くこともあるけれど、

弟がいてくれたからこその楽しい思い出、幸せも沢山あったんじゃないかな。

もしあの時、弟が死んでしまったならば、

俺は深い悲しみに打たれ、不幸のどん底に突き落とされていたかもしれない。

だから、面と向かっては言えないけれど、俺は弟にこう言いたい。



「今まで生きててくれて、本当にありがとう。頼りない兄ちゃんだけどこれからもヨロシクな」

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